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1923年に小西写真専門学校(旧制)としてスタートし100余年の歴史を持つ東京工芸大学。開学以来、最も長い歴史伝統を持つ現在の写真学科は、今日に至るまで時代の転換期をいくつも乗り越え、数多くの業界人を輩出してきました。現在の写真学科は、専門領域として「写真表現理論」「コマーシャル」「ドキュメンタリー」「アート」の4領域で構成し、視覚コミュニケーション、現代写真、肖像写真、コマーシャル、ドキュメンタリー、リサーチ&フィールドワーク、写真システム、フォトメディアの8つの研究室を擁しています。今回の探訪は、写真システム研究室。大和田良准教授に話を伺いました。

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1923年に小西写真専門学校(旧制)としてスタートし100余年の歴史を持つ東京工芸大学。開学以来、最も長い歴史伝統を持つ現在の写真学科は、今日に至るまで時代の転換期をいくつも乗り越え、数多くの業界人を輩出してきました。現在の写真学科は、専門領域として「写真表現理論」「コマーシャル」「ドキュメンタリー」「アート」の4領域で構成し、視覚コミュニケーション、現代写真、肖像写真、コマーシャル、ドキュメンタリー、リサーチ&フィールドワーク、写真システム、フォトメディアの8つの研究室を擁しています。今回の探訪は、写真システム研究室。大和田良准教授に話を伺いました。

第7回 写真学科/写真システム研究室

大和田良 准教授

2002年、東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。2004年、東京工芸大学大学院芸術学研究科メディアアート専攻博士前期課程修了。2005年、スイスエリゼ美術館による「ReGeneration.50Photographers of Tomorrow」に選出される。2011年日本写真協会賞新人賞受賞。これまでに個展開催・グループ展参画・著作多数。主な写真集に『prism』(青幻舎)、『FORM』(深水社)。著書に『写真を紡ぐキーワード123』(インプレス)、『写真制作者のための写真技術の基礎と実践』(インプレス)などがある。2010年より写真学科非常勤講師、2023年より准教授。日本写真学会、日本写真芸術学会会員。

歴史伝統を大切にしながら常に新しく広い視野を持ち続ける。

幅広い写真システムを通して新たな表現を探求する研究室

大和田先生の主な研究テーマについてお聞かせください


大和田:アナログからデジタルまで、アプローチを限定することなく、古典技法から現代の最新の写真術までを幅広く網羅した上で、どのような新しい表現が可能になるか模索しています。


ここ数年は、オルタナティブ・プロセスの持続可能性についての研究に力をいれていますが、デジタル時代において従来の銀塩システムや古典技法と呼ばれるさまざまなオルタナティブ・プロセスを組み合わせた上で、どのような方法が有効な表現方法として確立できるか。また、銀塩を使わないプロセスや古典技法などにおいて、毒性のある薬品を代替薬品に置き換えながら環境負荷の少ない写真技法を研究することで、写真表現の持続可能性といった視点にもつながっていくと考えています。


たとえばどのような代替薬品を用いますか?


大和田:1850年代に確立した写真技法で「コロジオン湿板」があります。従来のプロセスでは、臭化カドミウムなど毒性の高い薬品を用いますが、臭化カリウムなど毒性がなるべく低いものに置き換えて実践しており、研究室で学生と共に各種検証をしています。


具体的には、そうした代替薬品を用いた時に、どんな色調再現の違いが現れるか、果たしてそれが本当に写真技法として満足のいく濃度になるのかということを、細かくテストしながら特性を調べ、結果を定量的に見せていくということを行っています。


ガラスサイアノ
ガラスサイアノ
ニスによる保護処理
ニスによる保護処理

研究室に所属する学生は、やはりオルタナティブ・プロセスへの興味から集まっているのでしょうか?


大和田:どちらかというと、写真表現を突き詰めて行きたいという学生が多いです。もちろん色々な古典技法を使って制作する学生もいますが、現代的なデジタル技術や従来のフィルムなどを応用した写真表現を実践する学生が多く在籍しています。私自身、オルタナティブ・プロセスなどの研究だけでなく作家としての写真表現も継続して行っていますので、表現そのものを突き詰めたいとする学生の両方が自然と集まっている感じですね。


4年生は卒業研究が主になると思いますが、3年生のゼミではどのようなことを学びますか?


大和田:比較的取り組みやすいオルタナティブ・プロセス、たとえばサイアノタイプやルーメンプリントなどを最初に体験し、ソルトプリント、鶏卵紙(アルビューメンプリント)、コロジオン湿板、ヴァンダイクプリントやゴム印画など、いろいろと実践していきます。ちなみに原材料コストの関係で実施が限られているプラチナプリントの代わりに、カリタイプというプロセスを行います。カリタイプは、現像液の処方などにもよりますが、トーンの出方がプラチナパラジウムプリントに似ている傾向があります。


紫外線露光装置と実際の焼き付け状況
紫外線露光装置と実際の焼き付け状況

写真家・大和田良としての活動

大和田先生の写真表現への考え、また作家活動についてはいかがでしょうか?


大和田:作品に関しては、人が持つ好奇心のようなものがテーマのひとつになっています。これまで撮ったワインや盆栽なども、人はなぜそうしたものに対して情熱を持ちコレクションしたり育てたりするのか、あるいは人生の時間とお金の多くを注ぎ込むのか、ということへの興味がきっかけですね。それに対して適切な写真システム、技法を使って表現していくというのが、私の作品づくりの基本的な取り組み方です。


今年(2026年)の秋に、さいたま市大宮盆栽美術館で個展を予定しているのですが、同じ場所で10年前に盆栽をテーマにした個展を開催しまして、以来継続して同美術館がコレクションしている水石を撮影していきました。水石は、盆栽もそうなんだけれども、そこに自然風景を見出したり、その石に何を見立てるかというのが重要であり、ひとつのモノの見方になっています。私がずっと撮影している自然物や山のなどの風景写真を組み合わせた写真展にしようと思っています。


撮影スタジオ
撮影スタジオ
大判フィルムの引き延ばし機
大判フィルムの引き延ばし機

他大学や海外の学生との交流で知見を広げる

写真表現の研究という側面において、研究室の取り組みで特徴的なことは?


大和田:今年で3回目になりますが、夏休み期間中に学生たちとスウェーデンへ行き、現地の写真学校で研修を行っています。また帰国後、日本で合同展を開催するなど、文化交流を含めた写真表現研究を実施しています。2025年は8名の学生が参加し、本年度は11名が渡航予定です。


海外の写真学生や表現者は、写真に対する考え方や表現方法、写真の技術などにおける基準が日本の学生とはまた異なります。そうした違いを学んだ上で、自分の写真表現に活かしていくということを目的にしています。


交流は国内でもありますか?


大和田:他の大学との共同研究や、ワークショップなどはたくさんありますよ。たとえば武蔵野美術大学や、日本大学芸術学部など。海外も含めて、そうした大学との交流や合同での勉強会を経て、写真表現を突き詰めていくヒントを、どんどん得てほしいと思っています。こうした動きは学科というよりも写真システム研究室として実施していることですが、この先もさまざまなケースで交流が生まれるようになるといいですね。


研究室の学生の進路についてはいかがでしょうか?


大和田:2025年度は、撮る側に進む学生が数名、プロデュース系に進む学生が数名。その他、アルバム製作会社や写真機材メーカーに就職する学生がいました。年によって違いますが、スタジオや写真館、制作プロダクション、またカメラメーカーなど、基本的にはほとんどの学生が写真関連の仕事に就いています。


学科全体としてはいかがでしょう?


大和田:全体としても、写真関連業界へ進む学生が多い印象ですね。写真館に就職する学生も増えている気がします。もちろん、一般企業に進む学生もいますが、写真関連への就職希望者が多い傾向です。


スウェーデンでのヒトコマ(提供:大和田良准教授)
スウェーデンでのヒトコマ(提供:大和田良准教授)

写真学科を目指す受験生へ

これから東京工芸大学の写真学科を受験する、あるいは検討している受験生へメッセージをお願いします。


大和田:工芸大では、写真を学ぶことの面白さを非常に幅広く実感できると思います。入口は「写真が好き」ということが重要だと思いますが、写真学科で学ぶ中で「なぜ写真を撮ることは面白いのか」「なぜ写真を皆が大事に持っているのか」といったことを深く考えられるようになると思うのです。そうして、写真を通して社会とつながることができたり、写真が社会においてどんな意味を持つかを知ることができる。それが就職や独立も含めた仕事への考えやチョイスにもつながっていくでしょう。写真において「自分のやるべきことは何か」を考えられるようになることで、写真がより深く自分の中に根づいていくのではないでしょうか。写真が好きで、写真を通して社会と関わっていきたい皆さんには、非常に魅力的な学舎になっていると思いますよ。


文:木下 恵修
写真:影山 あやの

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