使用されているテンプレートファイル:single-labo.php

ゲームコンテンツ業界は、世界規模では25兆円程度、国内だけでも2兆円を超える市場規模を持つと言われています。ゲーム学科は、そうした市場に有能な人材を送り出すべく2007年にアニメーション学科のゲームコースとしてスタート。2010年、正式に学科として設置されました。ゲームを体系的に、技術および文化、教養など幅広いアプローチで捉えたカリキュラムが展開されています。今回の訪問先は、ゲームインターフェース研究室。原寛徳准教授にお話を伺いました。

*

ゲームコンテンツ業界は、世界規模では25兆円程度、国内だけでも2兆円を超える市場規模を持つと言われています。ゲーム学科は、そうした市場に有能な人材を送り出すべく2007年にアニメーション学科のゲームコースとしてスタート。2010年、正式に学科として設置されました。ゲームを体系的に、技術および文化、教養など幅広いアプローチで捉えたカリキュラムが展開されています。今回の訪問先は、ゲームインターフェース研究室。原寛徳准教授にお話を伺いました。

第5回 ゲーム学科/ゲームインターフェース研究室

原寛徳 准教授

慶應義塾大学理工学部機械工学科卒。2006年、同大学院理工学研究科博士後期課程単位取得満期退学。修士(工学)。アニメーション学科のゲームコース設立準備委員となり、2007年4月の設置時に助手として着任。2008年助教。2018年より准教授。メカトロニクスやフィジカルコンピューティングを主な研究対象としている。日本デジタルゲーム学会、情報処理学会、芸術科学会会員。

「人を楽しませたい」という気持ちを
多方面からサポートし「遊びの未来」を造る。

個の多様性尊重とチームの戦力たる人材育成の両立

ゲーム学科の特徴について教えてください


原:入学時から「企画」「デザイン」「プログラム」の3分野に分かれて教育を行っている点が挙げられるでしょう。もちろん、ゲーム概論をはじめゲーム史や企画基礎、CG基礎、プログラム基礎、コンピュータ概論など全分野の学生が身につけておくべき教養として一通り共通専門科目を開講しており、まずは幅広くゲームを学問として学ぶ環境が整っています。ですから1年生は、分野ごとに分かれている感覚をあまり持っていないかも知れませんね。2年次になると各分野でワークショップという授業、また3分野の学生でチームを組むゲーム制作という授業が始まりますので、このあたりから学生たちは分野別に分かれていることを実感するでしょう。


2年次からゲーム制作を体験するのですね


原:ゲーム制作の授業では、学生たちに複数名のチームを組ませて1年かけてアクションゲームを制作します。メンバーは教員がその時点での力量などを考慮して選んでいます。2年次の制作では、技術を学びつつ並行してゲームを作っていくので出来ることも限られていますが、面白いアプローチをしてくるチームもあります。自分の得手不得手を考察したり、さまざまな気づきができる学生は、3年次以降の伸びが違うと思いますね。


3年次では2本の柱があり、ゲーム制作応用とゼミになります。ゲーム制作応用が2年次と違う点は、チームでも個人でも良いことです。そして制作するゲームに縛りがないことです。もちろん最終的に実現可能なものでなければダメですし、新規性や研究的であることなどの条件はあります。また企画を通す段階での審査も、2年次よりも厳しく判断するようにしています。個人制作を認めているのは、チーム制作が苦手だったりチームよりも独創性を出しやすい学生がいたりする点を考慮したものです。実際、ゲーム制作においては、かつては各分野の専門家が必要でしたが時代とともにゲームエンジンの普及や情報の充実が進み、ゲーム制作環境が変化しています。個人制作でもクオリティの高いゲームが制作できるようになっています。


往年のアーケードゲームやボードゲームなどが資料として揃えられている
往年のアーケードゲームやボードゲームなどが資料として揃えられている

もう1つの柱であるゼミに関してはいかがでしょうか?


原:ゼミでは、学生が各研究室に所属することになります。実はここでまた、分野色が少し弱まるように感じています。研究室に分かれる際は、基本的に分野の縛りがないんです。もちろん中には分野を制限する研究室もあり、たとえば私のゲームインターフェース研究室は企画分野もしくはプログラム分野の学生を前提にしています。今年は例外的にデザイン分野の学生がいますし、そこまで厳密なものでもないんですけどね。


4年次は卒業研究に力を注ぐことになります。研究室によって、個人制作、チーム制作、デザイン、技術、デジタル、アナログ、調査研究タイプなどさまざまな選択肢の中で、いわば多様性を認めながら進んで行きます。加えて、他の研究室の学生の卒業研究においてサブメンバーとして携わる学生もいます。もともとはそうした仕組みはありませんでしたが、自然発生的に制度化されていった感じです。申請をすることで他研究室の制作の手伝いができるのは、ゲームが様々な要素で構成されている総合芸術であることがよく表れているように思います。



演習中の学生たち
演習中の学生たち

仮想空間と現実空間をつなげたい

原先生の研究分野、専門について教えてください。


原:学生時代はロボット、電気回路設計、音声の合成や認識処理を行っていて、またそうした内容をさまざまなシステムに応用するといった研究をしていました。そうした中でコンピュータやプログラミングに明るい人材としてゲーム学科の前身であるアニメーション学科ゲームコースの設立準備委員となり、ゲームコース発足と同時に助手として着任しました。


以降は、仮想空間と現実空間をつなぐ、また連動させるというのが主な研究対象です。そのために必要なのがメカトロニクス、フィジカルコンピューティングということになりますが、より具体的なキーワードで例を挙げるとハプティクスと呼ばれるものがあります。たとえば仮想空間で物を掴んだとします。映像では物を掴んでいますが、実際の自分の手には何もないので、何かを掴んだという感覚は手から得ることができません。それを手でも掴んだことがわかるようにする、つまり擬似的に触覚を再現することをハプティクスと言います。


ゼミ学生も現実空間へのフィードバックを重視した制作を行うことが多いです。たとえばジェットコースターを模したもので、体験者には音を聞かせながら、椅子に目隠しをして座らせ、進路に合わせて顔に強力なファンで風を当てるというものがありました。風と音だけでジェットコースターに乗っている感覚を再現してみようということで制作したのですが、けっこう怖かったです(笑)。


ゲームインターフェース研究室では、主にどのようなカリキュラムが組まれていますか?


原:3年次は、現時点のカリキュラムでは、4月にLEDガジェット、7月にマイコンカー、後期に無線コントローラーとそれを使う3Dゲーム、この3本立てで制作を行います。これまでチームで制作をしてきた学生が、1人で企画を考え、プレゼンして、OKが出たら最後まで作りきるところまでを行います。


ゲーム学科では、2年次のゲーム制作の授業でチームのリーダーがプレゼンすることはありますが、多くの学生にとっては、ゼミに入るまで、あるいは卒業制作まで自分で企画をプレゼンする機会がないのです。テーマに沿ったプレゼンの演習ではなく、実際に自分が作りたいものについて考えを巡らせてプレゼンをする、いわば実戦の場は、そもそもそれができる機会が限られますので、ゼミのような環境で積極的に機会を用意した方が良いと考えています。就職をした研究室のOBたちは「ゼミでプレゼンを経験できたことが仕事に活かせている」と口を揃えて言いますし、その点はゲームインターフェース研究室の特徴と言えそうですね。


制作する3本柱は、それぞれどのような目的で行われますか?


原:LEDのガジェットはまだ最初なので簡単なものにはなりますが、たとえばLEDが光ったらボタンを押したり、消していくといった、昔のゲームウォッチ的な操作性ものを制作します。回路を組んで箱に入れるとはどういうことか、どういう作業が必要なのかといった「カタチづくり」やマイコンの基礎的な部分を学びます。


マイコンカーでは、「動かす・動くものを作るとはどういうことか」を学びます。モーターなど動力を伴うものは、電気的にも造形的にも難しく、配線をつなぐだけではダメで、さまざまな制御が必要になります。また部品に関しても、どのように接続するのか、強度を含め素材は何が良いか、実際に作ってみなければ分からないことがたくさんあります。当然、その上でデザイン的な良さも求められます。仮想と現実のフィードバックという点で、音や光は比較的実現しやすいのですが、触覚などハプティクスの面はどうしても動力が関係してきます。マイコンカーはその動力部分を使えるようにする目的があります。


ここまでやったら、モノづくりとか動くとはどういうことか、などの理解ができます。そして後期は、ゲームを含めた無線コントローラーの課題になります。ゲームをするためのコントローラー、あるいはこのコントローラーで遊べるゲーム。どちらを先に考えるかは難しいところではありますが、基本的には学生に任せており、「企画した以上は具現化しなさい」と厳しく指導します。具現化できてこそアイデアであり、できなければ妄想で終わってしまいますので。またこの制作は就活のためのポートフォリオにもなります。



ゼミ演習室のひとコマ
ゼミ演習室のひとコマ

IT関係も含めた幅広い就職先へ輩出

研究室の学生、またゲーム学科全体の進路についてはいかがでしょうか?


原:ゲームインターフェース研究室の学生に関しては、ゲーム業界は少なくて、IT業界でエンジニアとして就職する学生が多いです。1年次はゲーム会社に就職したいと考える学生も多いようですが、3年4年と進む中で、ゲームを通じて学んだことをゲーム以外に活かすことや、ゲームに関連する特定の要素など、自分の興味がより明確になった学生がこの研究室を選んでいる結果だと思います。


ゲーム学科全体で見れば、年によって変動はありますが、大手も含めたゲーム会社およびグループ企業、また関連業界企業に就職する学生が多い印象はあります。ゲーム会社は即戦力を求める傾向があり、経験を積んでステップアップする道もありますね。そうした中で学生たちは目的に向かって複数の選択肢を意識しながら就職活動を行っているようです。


ゲーム学科で学んだ学生たちは、人を楽しませたい、人を楽しませるためにはどうすれば良いか、ということをずっと考えて来た人材なので、ゲーム以外の業界に就職をしても、人と接する場面などで評判が良い、ということをよく聞きます。ゲーム業界に輩出する人材だけでなく、そうした面も、とても誇りに思えますね。


手作りのガジェットで在室・不在を表示
手作りのガジェットで在室・不在を表示

文:木下 恵修
写真:影山 あやの

TOP