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東京工芸大学は2007年、芸術学部にマンガ学科を設置。東日本エリアの大学において初めての設置となりました。新しい学科でありながらも、コンテンツ産業隆盛の現代、日本のマンガ文化が益々発展する中で、同学科は有能な人材を次々と業界に送り出して来ました。いま、マンガ学科は創作系や理論系など幅広いアプローチでマンガを学ぶことができる機関として広く業界に貢献しています。このたび、ストーリーマンガ領域、夢来鳥ねむ研究室を探訪しました。

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東京工芸大学は2007年、芸術学部にマンガ学科を設置。東日本エリアの大学において初めての設置となりました。新しい学科でありながらも、コンテンツ産業隆盛の現代、日本のマンガ文化が益々発展する中で、同学科は有能な人材を次々と業界に送り出して来ました。いま、マンガ学科は創作系や理論系など幅広いアプローチでマンガを学ぶことができる機関として広く業界に貢献しています。このたび、ストーリーマンガ領域、夢来鳥ねむ研究室を探訪しました。

第6回 マンガ学科/夢来鳥ねむ研究室(ストーリーマンガ)

夢来鳥ねむ 教授

1989年、角川書店コミックコンプ掲載の『宮狐』でマンガ家デビュー。主な作品に『HAUNTEDじゃんくしょん』、『緋翔伝~幾千の月のかけら~』(KADOKAWA) 、『恋咲忍伝おもいっきりハヤテさま』、『セイル』原作;有里紅良(講談社)などがある。有限会社La・Moon(ら・むうん)代表としてイベントや演劇などの活動にも携わっている。2010年特別契約准教授として東京工芸大学に着任、2015年専任、2022年より教授。

世界を魅了する日本のマンガ文化と
それを牽引する人材づくり。

フリー志向の強い学生が多い中で幅広く知見を身につける

夢来鳥先生の主な専門分野および研究室について教えてください


夢来鳥:マンガ家として作品を執筆しながら、主にストーリーマンガと呼ばれる分野について調査研究をしています。ストーリーマンガとは、複数ページ建てで物語が展開していくものを指します。私はこれまで少年マンガを多く描いてきましたので、その指導を得意としていますが、もちろん少女マンガや青春マンガなど他のジャンルについての指導も行います。


研究室・ゼミにおける指導は3年次以降で、マンガ家(作家)を目指す学生が多く集まります。なおストーリーマンガ系の女性教員は現時点で私だけであり、比較的女子学生の割合が多くなることがあります。学科全体では、年度によりますが半々あるいは4:6くらいで女子が少し多い傾向にあります。


研究室では主にどのような指導を行っていますか?


夢来鳥:プロの作家と編集者の間でのやりとりを想定した指導は、特徴のひとつだと思います。たとえばマンガそのものを描く前の、ネームと呼ばれる大まかな構成やコマ割り、台詞、キャラクター配置などを記したラフや、その前段階のプロットを練る段階から、自分の経験を交えてさまざまなアドバイスを加えながらコミュニケーションしています。


マンガ学科としてはどのようなカリキュラムが組まれていますか?


夢来鳥:入学した学生は、まずは「ストーリーマンガ」「キャラクターイラスト・カートゥーン(ひとコママンガ等)」「マンガ研究・編集」の3領域の基礎を幅広く学びます。学科としては、創作系とともに理論系にもアプローチをして、系統的に学ぶことができる環境を用意しています。こうして1、2年次に分野横断的に学んだら、3年次からはストーリーマンガをはじめ、キャラクターイラスト、デジタル表現、カートゥーン、マンガ研究の5分野のいずれかに所属することになります。


入学してくる学生さんはどのような傾向がありますか?


夢来鳥:1年生のうち、ざっくり6割程度がマンガ家志望、3-4割がイラストレーター志望という印象で、年次が進む中で目標が変化することはありますが、おおむね半数以上がフリー志向といった感じでしょうか。就職をするにしても、マンガの世界にはさまざまな仕事がありますので、まずは目標に向かって頑張ってほしいですね。


ときおり、入学前からすでにプロとして仕事をしている人もいて「大学であらためて基礎から、また系統的に学びたい」との考えで入学してくるケースもありますよ。もちろん在学中にデビューする学生もいます。たとえば昨年の4年生ですが、小学館の「Sho-Comi」で連載していました。


なお、卒業研究は「未発表であること」が規定となっているので、審査が終わるまでは商業誌等に掲載することができません。卒業制作はそのための作品を提出してもらっていますので、仕事を始めた学生は体力的にもたいへんだと思います。でもそうした学生は、やはり優秀ですしバイタリティーがあると感じます。






演習室にて制作中の様子


業界との距離を縮める「出張編集部」

マンガ学科ならではのカリキュラムやイベントなどは、どのようなものがありますか?


夢来鳥:なんと言っても「出張編集部」でしょう。マンガ編集者が来校し、学生の作品を見て講評してくれるというイベントです。毎年後期の終わり頃に実施しており、2024年は9社15編集部が参加、2025年度は10社17編集部が参加しました。小学館や講談社、集英社、KADOKAWAなど大手をはじめ、さまざまな出版社の編集者が学生の作品を見に来てくださります。近年はアプリ・電子系マンガ編集部の参加が増加傾向にあり、今後は別枠イベントとして開催することも検討しています。


またキャリア教育の講義科目でさまざまな編集者を招く授業があり、その際にプチ出張編集部を実施することもあります。それを含め、出張編集部は参加対象を制限していないのがポイントで、1、2年生でも作品を持ってくれば、また時間さえ合えば、来場した編集者全員に見てもらうことも可能です。卒業生もウェルカムなので、ちょっとしたお祭りのような感覚ですね。


「出張編集部」いつ頃から開催されているのですか?


夢来鳥:2016年頃に、2社くらいが参加して小規模で始めたのが最初で、編集者の方からのオファーがあれば開催していました。プロの編集者に直接作品を見せ講評してもらう経験は、学生たちにとって業界との接点であり、大きな価値になると思います。ある意味、この出張編集部は編集者たちが次代のマンガ家を探しに来ているようなものです。そこでチャンスを掴み、卒業後あるいは在学中にデビューした先輩たちがしっかりと結果を残しているからこそ、編集者の皆さんにも信頼され、継続かつ規模も大きくなって開催できていると言えるでしょう。


 


卒業生の作品/演習室の様子
卒業生の作品/演習室の様子

大きな夢があるマンガ業界

今どきのマンガ業界の傾向について教えてください


夢来鳥:ひとつの文化として、国をあげてバックアップされているようなイメージがありますね。マンガ家を目指す人々にとっては、環境としては悪くないと思います。とりわけデジタル時代になって、マンガアプリなども含め発表する場が増えているという意味では、大きく環境が変わったと言えます。


なおデジタルの広がりは媒体だけでなく制作環境にも及んでおり、いま学生の多くはiPadなどのタブレットでマンガを描いています。一部、紙とペンで描いたり、アナログとデジタルのハイブリッドで描く学生もいますが、道具の主流はデジタルですね。


そうした中、ストーリーマンガ作家として一定クラスの売れっ子になれば、連載から単行本、そしてウェブ系も含めたメディア化、ドラマや映画化などの中でさらに単行本が売れ、次回作も注目されるというサイクルが出来上がり、億単位の収入を得るケースも出てきます。実際に卒業生でそのレベルに達している作家もいますし、マンガの世界は、まさに夢のある世界だと思います。


学生の進路についてはいかがでしょうか?


夢来鳥:マンガ学科の学生はフリー志向が比較的強い傾向にあります。卒業後、およそ3割前後はフリーで活動しながらデビューを目指している印象がありますね。クリエイティブ系の業界をはじめ約半数の学生が就職をしますが、近年は就職と作家活動の二刀流を目指す学生も増えてきました。私は学部の就職委員長を務めており、フリーで活動することを応援しながら、キャリアのために就職をすることも選択肢の一つであるという空気づくりもしています。


いわゆるストーリーマンガ作家としてのマンガ家だけでなく、たとえば企業や官公庁の広報宣伝物においてツールとしてマンガが用いられたり、医療系や学習系の分野でもマンガで説明するようなものがあります。またイラストレーターとしての仕事もあります。デジタル時代の今、そうした土壌が拡大していますので、フリーとしてはもちろん、就職して経験を積みながらデビューを目指すのも合理的と言えるのではないでしょうか。


やはり社会人経験は、さまざまな視点でモノを考えるトレーニングになりますし、作家になる上で役に立つことだと思っています。また、人間にはそれぞれ適正もありますので、悩んでいる学生がいれば、いったん就職してみてはどうかとアドバイスをしますね。マンガ学科は、決してマンガ家を目指すことしかできない場所ではありませんし、また一部の突出した才能を持つ人だけの場所でもないのです。


出版社への就職についてはいかがですか?


夢来鳥:編集者を前提として出版社を志望する学生もいます。ただし、とりわけ大手出版社に関しては全国の有名大学の学生たちとの競争になりますし、ストレートで入社する学生は数としては多くありません。しかし編集者は経験がモノを言う面もあります。たとえばアルバイトで入社したり、中小の出版社や編集プロダクションに所属してスキルを上げてから転職することも大切で、またそうしてキャリアアップしていく時代でもあると思います。


文:木下 恵修
写真:影山 あやの

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