落書きを見た先生が美大進学を勧めた
柔らかな太陽光が回る白い空間。そこに鮮やかな色彩のイラストが大小さまざまに展示されているーー。
今回の取材は黒田さんが個展を開催する東京・西荻窪のギャラリーで行われた。
黒田:この空間に来て「元気になる」「幸せな気持ちになる」と言われるとうれしいですね。気持ちがポジティブな方向に気持ちが動いてもらえるのは、なんか自分自身のイメージが伝わっている気がします。
目一杯明るい色合いに、デフォルメされたキャラクターたち。これらがあいまって緊張感を解き、見ていると「ほっこり」した気分になる。
この作風はどうやって生み出されたのか。
過去に遡って話を聞くと、意外なエピソードに行き当たる。
黒田:高校生の時、地理の先生に落書きを見つけられたんです。怒られるのかと思ったら先生が言ったんです。「君は美大に行ったほうがいいんじゃないか」。授業そっちのけで描いた集中力を買ってくれたのかもしれません(笑)。
落書きは教諭や同級生の似顔絵だったり、歴史上の人物の肖像画に髭を描き加えたりしたもので、写実的というよりはかなりデフォルメされたものだったという。
高校時代は一時期、美術部に所属していたが、3年間「全力投球」したのは軽音楽部だった。ロックバンドでボーカルを担当。その一方で、自分たちのバンドのTシャツやCDジャケットの制作に夢中になったという。
黒田:高校卒業後、2浪したのですが、半年ほどで予備校を辞めてしまいました。私立の美術大学を目指すコースに通学していたのですが、色彩構成やデッサンの授業も全然楽しくなくて。フリーターになり、バンド活動を続けていました。
![「学展委員会」のインスタレーション。作品の写真は大学広報誌「えんのき」の表紙を飾った(写真提供:東京工芸大学入試課)](https://kougei-dousoukai.jp/wp/wp-content/uploads/2025/01/biography_5_2.jpg)