人生の転換点になった大学の先生のアドバイス
「令和のメディアアーティスト」として活躍する同窓生へのインタビュー企画は、今回で7回目を迎えた。毎回、大学に進学した経緯から最近の活動までたずねていくうちに、実に面白いことに、みなさんに共通した「意外な」スキルに気づかされるのだ。
それは高度な表現スキルを持ちながら「プロデュース力」に長けていることである。
今回登場する大塚榛夏さんもそんな一人だ。
幼い頃からゲームで遊ぶことが好きだったという大塚さん。NINTENDO 64、NINTENDO GAMECUBE、ゲームボーイ、ゲームボーイアドバンスなど、1990年代から2000年代にかけて大人気だったゲーム機に慣れ親しんだという。
大塚:私はどちらかというとアクションゲームが好きで、初めて遊んだ「星のカービィ」もその一つでした。NINTENDO 64 は3Dが使われ始めた当時のゲームだと思うんですけど、3Dで描かれる世界観やキャラクターのかわいさに惹かれました。自分で操作したとおりにキャラクターを動かしながら、ゲームの世界を体験できることもすごく魅力的でした。最も熱中したのは小中学生時代で、放課後は帰宅してからずっとやっていた記憶があります。親にゲーム機を取り上げられたこともありました(笑)。
あとは好きなマンガのキャラクターなどの絵を描いていましたね。中学時代にはバスケットボール部や美術部に所属した時期もありましたが、あまり熱が入らなくて、結局、放課後は絵を描くか、ゲームをやるかのどちらかでした。
高校ではデザインやグラフィックを学び、東京工芸大学芸術学部へ進学。ゲーム学科で3DCG(3次元コンピューターグラフィックス)を学び、現在はモバイルゲームの3Dデザイナーとして、ゲームに登場するキャラクターの3Dモデルなどを制作している。
……と綴ると、トントン拍子で人気職業に就いた順風満帆の半生のように見えるのだが、葛藤を抱えていた時期もあった。
大塚:実は高校の頃まではイラストを描く仕事に憧れていたんです。ただ、周りに絵のうまい人がたくさんいて、この道を極めるのは厳しいと何となく思っていました。高校受験でも、一番入りたかった学科は倍率が高くて別の学科を受けたんです。
でも、大学入学直後に、工芸大の先生の言葉で吹っ切れました。「イラストを描ける人は世の中にたくさんいて競争も激しい。これから需要が増える3Dデザイナーを目指すのはどうだろう?」と。その話を聞いて「確かに」と納得して、3Dを本気で勉強しようと思いました。いま思うと、あれが本当に大きな転換点でしたね。
だから大学には真面目に通った。
大塚:ちゃんと学校に行って、授業に全部出て、課題をしっかりやって、教えてもらいました。学べるうちにちゃんと学んでおこうかな、と思いまして。語学や一般教養で苦手な教科もありましたが、それでも人並みにやりました。サボるという発想はなかったですね。