制作の原点は中学時代のクラブ活動
日清食品「ラ王」、AGC、中外製薬、東京ガス、日本郵便、HONDA「FREED」、そしてオープンハウス…..これらのCMのうち一つぐらいは、みなさんも一度は目にしたことがあるかもしれない。
これらを手掛けたのが、今回登場する吉兼啓介氏だ。CMプランナーとして企画立案を担う立場であり、クリエイティブディレクターとして制作全体を統括する立場でもある。
広告の世界に興味を持ったきっかけは、意外にも中学時代の課外活動にあった。
吉兼:部活動以外に学校でクラブ活動があって、たまたま「CMクラブ」に所属したんです。校内のクラブなどを紹介するビデオを制作するという活動で、自分たちで映像を撮影して編集するんです。小さな映画監督になったような気分で、野球部と掛け持ちしながら、放課後に撮影していましたね。
中学生にして、早くもCM制作の醍醐味を味わう出来事があった。
吉兼:ウチの実家が製麺所だったので、その製品をテーマにCMを作ってクラブ内で上映したんです。投票で1位になって、クラス中が笑ってくれた。家族も喜んでくれて、自分もうれしい。みんながHAPPYになれるっていいな!と思った瞬間でした。
振り返ると、ウチの親父が呑兵衛で、幼い頃からよく居酒屋に連れて行かれたんですよね。そこで大人たちの会話を聞いて、どういった言葉にどう反応するのかを見ていたので、そういう経験が生きたのかもしれません(笑)。
映像に興味を抱きつつ、高校時代は「真剣に甲子園を目指していた」というほど野球に打ち込む日々だったという。
吉兼:坊主頭で、毎日泥だらけでした。結果的に甲子園という夢はかなわなかったんですが、真剣に一つのことに取り組む姿勢は、今の仕事にも生きているかもしれません。
野球部引退後、美術の道を志した。中学時代の記憶や美術の授業での楽しさが重なって、自然と「美大を目指そう」と思うようになり、デッサン教室にも通った。そして東京工芸大学に合格した。
