原点は作品の「世界観」と「舞台裏」
1990年生まれ、東京工芸大学アニメーション学科卒業、東京藝術大学大学院修了、そしてアニメーション作家へーー同じような経歴の久保雄太郎さんと米谷聡美さんだが、アニメーションとの出会いと受けた印象は微妙に異なる。
久保さんがアニメーションに惹かれたのは、小学校低学年の頃だった。
久保:「トムとジェリー」など、アメリカのカートゥーンをテレビでよく観ていました。しゃべっていなくても、表情や動きだけで登場人物の感情がわかる。それがすごく面白くて、無意識のうちに「絵が動く」ことの面白さに惹かれていきました。
大学でアニメーションを学ぶきっかけを与えたのが、1995年に放送された「新世紀エヴァンゲリオン」との出会いだった。
久保:それまでロボットアニメには興味がなかったんです。でも、アニメの「ベスト100」を選ぶ番組で上位にランクインしていて、気になってレンタルしたら……なんだこれは、と(笑)。作品の世界観や構造、演出の全てが、それまでのアニメの印象を覆しました。
一方、米谷さんの原体験は、幼少期に映像作品の「舞台裏」に触れたことだった。
米谷:ディズニー映画のメイキング映像だったと思うんですけど、アニメーターの方が実際に身体を動かして演技を決め、一枚一枚紙に絵を描いて動かしているのを見て、「こんな風にして映画ってできてるの?」と衝撃を受けました。それまで映画は自然現象のようなものだと思っていたので(笑)。そこから「自分でも描いてみたい」「動かしてみたい」と思うようになりました。
作品の世界観と舞台裏。衝撃を受けたポイントは異なるが、それぞれに強烈な初期衝動を抱えながら、やがて東京工芸大学のアニメーション学科で出会うことになる。久保さんが2年生、米谷さんが1年生の時だ。